ウイルスバスター(トレンドマイクロ)の正体
これは非常に難しい問題です。ウイルスバスターで知られるトレンドマイクロは、複雑な経緯をたどった企業であり、その実態を一言で言い表すことはできません。
一般論
少なくとも中国企業ではない
トレンドマイクロは少なくとも中国企業ではありません。もともとトレンドマイクロは、1988年に台湾出身の創業者が米国で設立した企業を源流とします。
社歴
経営陣の一覧
現在の本社は東京にある
同社の本社は東京都渋谷区代々木の新宿マインズタワーにあります。
東証一部上場企業である
トレンドマイクロは東京証券取引所市場第一部に上場しており、積極的な情報開示義務が課されています。
日本経済新聞社 株式情報(4704)

トレンドマイクロ 株式情報
日本のメガバンクとの取引がある
三井住友銀行や三菱UFJ銀行、みずほ銀行といった日本のメガバンクと取引があります。
あの噂の真実
トレンドマイクロは顧客情報を売り渡したか
2019年に、トレンドマイクロから顧客情報が流出し、「サポート詐欺」に悪用されたという報道がなされました。しかしこれは、特定の元従業員によるものであり、トレンドマイクロが行ったわけではなく、海外で起きた事件であるということです。最も、これはトレンドマイクロ側の言い分に過ぎません。


F-Secureの事例
似たような事例としてフィンランドの情報セキュリティ大手、エフセキュアの日本法人から個人情報が流出したという事件がありました。これも同様に、特定の元従業員によるものであったことが判明しています。

サイバー攻撃で流出したのか
2019年の事件
これも同じく2019年に、トレンドマイクロの中国・南京の拠点がサイバー攻撃を受け、情報が流出したという情報が出回りました。
しかし、実際に流出したのは顧客情報ではなくデバッグファイルなどであり、南京の拠点は関係していないということです。しかし、これもトレンドマイクロ側の言い分に過ぎません。

南京に拠点自体はある
中国拠点の求人情報サイトによると、トレンドマイクロの同国における最大の開発拠点は南京にあり、1997年に設立されました。本格的な投資は2004年から行われ、主にソフトウェア開発の業務を担っているようです。
攻撃を受けたのは米国拠点
朝日新聞社、インプレス、アイティメディアによれば、実際に攻撃を受けたのは、同社の米国拠点であるということです。ロシアのハッカー集団による犯行とみられています。



同社の米国拠点一覧
また、2020年に入ってからは、三菱電機、NEC、神戸製鋼所といった防衛関連企業がサイバー攻撃を受け、一部重要なものを含む情報が流出したという報道がなされました。



トレンドマイクロ製品を使っていた
三菱電機は、トレンドマイクロのセキュリティソフトを使っていたと言われています。また、同社製品には脆弱性があったのではないかと考えられています。トレンドマイクロ製品の脆弱性を悪用し、マルウェアが生成されたということなのです。もっとも人が作っている以上、完璧なソフトなど存在しません。かのWindowsでさえも、毎月のようにOSの脆弱性を修復するプログラムを配布しています。



批判を浴びるウイルスバスター
これを受けてネット上では、ウイルスバスターが情報窃取を助長したとの憶測が展開されています。しかし、実際に記事を読めば分かる通り、そもそも件のマルウェアを発見し、事件が発覚するきっかけを作ったのがウイルスバスターなのです。もっともサンプルの提出を受けたトレンドマイクロが、これを見抜けなかったことは問題と言えるかもしれません。

加害者は巧妙な手口を用いていた
加害者と見られる特定国のハッカー集団は、ファイルレスマルウェアを用い、三菱電機の中国子会社のサーバーを経由して本社のシステムに侵入するという巧妙な手口を用いたことが判明しています。関係各社による対応の遅れについては、この巧妙さが原因ではないかと考えられています。





トレンドマイクロは中国に買収されたのか
ネット上の情報では、トレンドマイクロは2015年に中国企業の亜信科技に買収されたというものがあります。
しかし、これは全く事実と異なり、実際の報道はトレンドマイクロの中国法人が「中国市場で展開する製品のライセンスや技術の著作権を含めたビジネスのすべてを」亜信科技に譲渡するというものになります。
つまり、トレンドマイクロの中国事業を展開するグループ企業を、中国企業に譲渡したという話になるのではないでしょうか。ビジネス存続のために、中国政府の規制強化に対応したという話だと考えられます。

Googleの事例
実際に中国のインターネット規制は非常に厳しいことで知られており、過去には米Googleも規制対応等を理由として中国市場から撤退しました。
外国人持株比率
なお、トレンドマイクロの外国人持株比率は54.4%(2020年6月現在)です。また、同社の筆頭株主は、日本マスタートラスト信託銀行(信託口)であり、持株比率は19.59%です。

各国のトレンドマイクロ
Trend Micro Incorporated(台湾)、Trend Micro America(米国)等、各国・地域のトレンドマイクロは、日本のトレンドマイクロの連結子会社です。従って、「米国本社」などは、各国における本社であることを意味します。
ウイルスバスターは中国製なのか
ネット上ではウイルスバスターの開発言語が中国語であり、従って中国製のソフトであるという論調が見られます。
ソースコードなどを確認したわけではないのではっきりしたことは申し上げられませんが、トレンドマイクロは前述の中国・南京を含め、台湾、米国を始めとする10カ国・地域12箇所に開発拠点を持っており、ソフトウェア自体がそうした海外拠点で開発されていることは十分に考えられます。
売上は海外のほうが多い
東洋経済新報社によれば、トレンドマイクロの海外売上比率は約60%であり、国内より海外での売上のほうが多くなっています。
解析拠点はフィリピン
一方、肝心のセキュリティ情報の解析を行っている「TrendLabs (トレンドラボ) 」はフィリピンと米国にあり、その最大のものはフィリピンにあります。

日本でも解析
また、日本特有のインシデントについては、日本国内の「リージョナルトレンドラボ」で解析を行っています。

開設は2007年
日本のトレンドラボは2007年に開設されました。

トレンドマイクロは多国籍企業
純粋な日本企業ではない
以上のことから、ウイルスバスターを展開するトレンドマイクロは純粋な日本企業ではなく、多国籍企業であるということがわかります。
最も、ソフトウェアの開発やセキュリティインシデントの分析には多数の人手が必要であり、多国籍企業が人件費の安い新興国に開発拠点を設けるのは、自然なことであるということもできます。

インドの事例
実際に米国企業の多くもインドに進出しており、シリコンバレーでもたくさんのインド人が働いています。

https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/sangyou/pdf/1028_02.pdf
筆者の独自見解
誠実さはあるのか
トレンドマイクロが不信感を抱かれる原因として、海外発祥の企業であるということ以上に、誠実さに欠けるという部分があるのではないかと思いました。
海外拠点がわかりにくくなっている
例えば同社の公式サイトには、個人向け、法人向け、投資家向け問わず中国やフィリピン等、海外拠点の情報が全く掲載されていないか、あったとしても非常に見つけづらくなっています。なるほど確かに、法的には決算や財務情報、適時開示で事足りるかもしれません。しかし、国内で販売している、セキュリティソフトという非常に敏感な分野における製品の開発や解析を海外で行っている以上、それをユーザーに知らせた上で理解を得るという、国内トップシェアのメーカーとしての社会的な責務があるのではないでしょうか。
セキュリティ履歴収集問題
2018年に、米アップルのApp Store上から、ウイルスバスターなどの同社製品が一時削除されたというニュースはご存知の方も多いと思います。トレンドマイクロはこの問題が発覚してから、積極的に対処に当たろうとしている印象を受けました。しかし、それではなぜ「App Store上からの削除」という事態にまで至ってしまったのでしょうか。



同社が不信感を抱かれる根本的な原因は、こうした企業姿勢にあるのではないかと思うのです。
おすすめのセキュリティソフトなど
ウイルスバスターを使っていますが、削除したほうが良いのですか?
(み)現時点であなたがウイルスバスターを利用しており、性能やコストの面で特に不満を感じられていないのであれば、特にその必要はないと思います。そもそもトレンドマイクロ自体が、東京証券取引所市場第一部上場企業であるという紛れもない事実があります。何よりせっかく購入したのに削除するなんて、お金がもったいないです。
ウイルスバスターを導入しないほうが良いのですか?
(み)確かにユーザーに不信感を抱かれる点が多数見受けられることも事実ですが、反面ウイルスバスター自体が第三者機関にも認められる、検出率の優れたセキュリティソフトであることもまた事実です。遥かに危険なマルウェアやランサムウェアの脅威から大切なデバイスを保護するためにも、利用目的に合致するのであればご利用になることをおすすめします。
ウイルスバスター以外の選択肢はないのですか?
(み)一方、ウイルスバスター以外にも、セキュリティソフトは多数存在するということもまた事実です。次項以下にまとめましたので、ご関心がおありの方はご覧ください。ウイルスバスターシリーズについても最後にまとめました。
パソコンのセキュリティ費用が半額に!

業界最高クラスのセキュリティ「G DATA インターネットセキュリティ」は、3年3台版の更新費用が「ウイルスバスター」や「ノートン」のおよそ半額です!ドイツ製。
軽くて高性能なソフトはないのですか?
(み)実際に使ってみた中で、個人的に優れていると感じたセキュリティソフトは、Avast(アバスト)と
ESET(イーセット)です。


最も、アバストは無料アンチウイルスなどにおいて個人情報販売騒動を起こしており、不透明な部分もあります。プレミアム(有料)版に関しては問題ないと思います。



更新料が格安のものはないのですか?
(み)格安のものとしては、インド製ですがZERO ウイルスセキュリティというものがあり、1台1980円で使えます。Windows Defenderと併用するとよいのではないでしょうか。複数台だとキングソフトのほうが安いのですが、こちらは中国企業が展開するソフトで中国製になります。
大量のデバイスがある場合、どのようにコストを抑えれば良いのですか?
(み)PCモバイル合わせて5台までならESETがお得です。6台を超えるようだと、
ESET複数か、もしくは事実上台数無制限のマカフィー リブセーフ
(米国製)や、カスペルスキー セキュリティ
プレミアライセンス(ロシア製)のほうがお得かもしれません。

ウイルスバスターやノートンは、おすすめできないのですか?
(み)コストが許容できるのであればウイルスバスターやノートン
(米国製)も別に悪くはないと思います。普通に売れていて実績もありますし、結局のところ利用目的に合うか合わないかではないでしょうか。
無料のものはないのですか?
(み)Windowsにもともと入っているWindows Defenderは無料ですが、性能のほどはよくわかりません。また、広告が表示されたりしますが、アンチウイルス機能のみなら前述のAvastのほか、AVG、Aviraなどが無料版を提供しています。ただ、個人情報がサンプルとして使われている可能性は想定したほうがよいと思います。こちらは検出率などは問題ありません。
純日本製のソフトはないのですか?
(み)純日本製というと、FFRIのものなどがありますがホワイトリスト方式になると思います。一応、日本企業が関わるセキュリティソフトについてはこちらにまとめました。

ウイルスバスターにはどのような種類があるのですか?
(み)トレンドマイクロのセキュリティ製品については、次項にまとめました。
トレンドマイクロのセキュリティ製品
ウイルスバスター クラウド
国内シェアトップのセキュリティソフト
ウイルスバスター クラウド は、トレンドマイクロによる総合型マルウェア対策ソフトであり、国内市場では個人向け、法人向けともに市場シェアトップです。
動作はやや重い
一方、ウイルスバスターは高性能な反面、比較的重量級のアプリです。このため、年数の経過したPCや処理性能が低めのPC、またシステムドライブにHDDを使用したPCなどでは動作が重く感じるかもしれません。
まずは体験を
ウイルスバスターに限った話ではありませんが、相性問題などが起こる可能性は想定されたほうがよいのではないでしょうか。ウイルスバスターは30日無料体験を実施していますので、お試しになられてからご購入されることをおすすめします。
なお、動作の軽いソフトとしてはESETなどがあります。
ウイルスバスターの種類
ウイルスバスター クラウド
最も標準的なウイルスバスターで、総合的なマルウェア対策を提供します。
売れ筋は「ダウンロード3年版」で、PC・スマホ合計3台まで利用できます。無料体験30日と、2ヶ月延長キャンペーンを組み合わせることもできます。
ウイルスバスター 保険&デジタルライフサポート
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