Lenovo(レノボ)PCの正体
Lenovo(レノボ)のPCは、国内市場において、既に定番と言って良い地位を占めていますが、その実体を誰もが知っているわけではありません。
そもそもレノボとは
Lenovo(レノボ)とは、そもそもどこの国にある、どのような企業なのでしょうか。
中国のパソコンメーカー
社名は「聯想集団」
レノボは、正式には「聯想集団(レノボ・グループ)」といい、中国(中華人民共和国)に本社を置く、パソコンなどを製造するメーカーです。同社は「香港に登記するグローバル企業」を標榜していますが、実質的な本社は北京にあり、中国企業であると見られています。

ブランド名は「Lenovo」
現在、同社が使用しているブランド名は「Lenovo(レノボ)」です。かつては「lenovo」と、最初が小文字で始まるロゴを採用していましたが、読み方は同様に「レノボ」です。イメージの刷新などを狙いとして、2015年に新ロゴが発表されました。


かつては「Legend」
もともとLenovo(レノボ)は、中国国内向けのブランドであり、対外的には「Legend(レジェンド)」が用いられていましたが、2003年に統一されたという経緯があります。
https://web.iss.u-tokyo.ac.jp/~marukawa/legend.pdf

筆頭株主はレジェンド
聯想控股(レジェンド・ホールディングス)は、同社の筆頭株主です。2015年頃に香港でIPO(新規株式公開)を行い、その時価総額は20億ドルにのぼったとされます。

中国科学院
聯想集団の前身である「中国科学院計算技術研究所新技術発展公司」は、中国政府系研究機関として知られる、「中国科学院」の一部門であった「中国科学院電子計算器研究所」出身の柳伝志氏によって、1984年に中国で設立されました。


世界首位級のPCメーカー
Lenovo(レノボ)は、世界トップクラスのシェア(市場占有率)を誇るPCメーカーです。東洋経済新報社『会社四季報業界地図』によれば、2018年の世界シェアは米HPに次ぐ2位でした(同3位は、米デル)。
アジアで高いシェア
途上国で強い
Lenovo(レノボ)のPCは価格性能比に優れ、特にアジア地域においては高い市場占有率を誇ります。中国やインド、東南アジアなど、未だ一人あたりGDPの低い国において、安価なPCの需要が高いということは想像に難くありません。



日本市場でも首位
一方、日本もその例外ではありません。MM総研などによれば、2019年度の国内パソコン出荷台数において、レノボが市場シェア首位でした。

なぜ日本で首位なのか
しかし、新興国ならまだしも、アジア屈指の先進国として知られる日本において、中国企業のパソコンがトップシェアを誇るという事実に、違和感を感じられる方も多いのではないでしょうか。実のところ、これにはいくつもの事情があります。


レノボはなぜ巨大化したか
巨大パソコンメーカー、レノボ
この秘密を解き明かすには、まずレノボがなぜここまで巨大なメーカーに成長したのかという点に着目する必要があります。
https://www.jst.go.jp/crds/pdf/2008/OR/CRDS-FY2008-OR-10.pdf
豊富な人口と安価な労働力
中国製品の価格競争力が高いことに関する一般的な理解としては、膨大な人口に裏付けられた豊富で安価な労働力と、製品の需要にあることが知られています。
https://www.maff.go.jp/primaff/kanko/project/attach/pdf/130331_24cr03_04.pdf
改革開放
中国は基本的に、いわゆる「改革開放」政策の一環として、社会主義政治体制を維持しながら一部市場経済を導入し、海外資本による直接投資を得ながら高度経済成長を遂げてきました。

https://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sa02-02/pdf/sa02-01-01-01.pdf
IBM、NEC、富士通
レノボはM&Aによって成長した
しかし、レノボの成長はこうした一般的な理解で割り切れない部分があります。それは、レノボがM&A(合併・買収)によって成長してきたという紛れもない事実があるからです。
IBMとThinkPad
最初の事業買収はIBMでした。レノボは、2004年に米IBMのパソコン事業を買収し、「ThinkPad(シンクパッド)」「ThinkCentre(シンクセンター)」で知られる、同社のブランドおよび資産を手に入れ、ハイエンドPC市場において飛躍を遂げたのです。

大和研究所も
「ThinkPad(シンクパッド)」の開発を担う、旧・日本IBM大和研究所(現・レノボ大和研究所、横浜市西区)もレノボに引き継がれました。

サーバーも
レノボはその後、IBMの一部サーバー事業も取得しました。

レノボにとって、次なる大型買収の舞台は日本でした。まず、NECのパソコン部門であったNECパーソナルプロダクツを前身とする、NECパーソナルコンピュータを共同持株会社の傘下とすることで、実質的に買収しました。

米沢事業場は維持
NECPCのマザー工場として知られた、NECパーソナルコンピュータ米沢事業場(山形県米沢市)は維持されました。現在ではNECブランドのPCを生産するほか、レノボの下請けとして同社製品「ThinkPad」一部モデルなどの最終組立を受託しています。これには、米沢事業場の雇用が維持されたという側面と、NECの高度なPC製造ノウハウがレノボに吸収されたという側面があります。



サポートは共同
その後のサポート体制については、両者共同により行われているようで、福井市などに拠点があります。修理に関しても、NEC群馬事業場が共同で利用されています。



富士通クライアントコンピューティングを買収
日本での次なる買収は富士通でした。富士通のパソコン部門であった、「富士通クライアントコンピューティング」株式の過半数を取得し、子会社化しました。


国内工場は維持
富士通ブランドパソコンの生産を担ってきた、同社傘下の島根富士通(島根県出雲市)、および富士通グループの富士通アイソテック(福島県伊達市)は維持されました。
スマートフォン「moto」などで知られる携帯電話メーカー、米モトローラ・モビリティを米グーグルから買収しました。一方、こちらに関しては他社の攻勢により、あまり販売台数が振るわないようです。




結果としてどうなったか
かつては6位だった
IDCなどによれば、2010年時点でのパソコン国内シェアは、1位NEC、2位富士通であり、レノボは6位でした。これには当然のことながら、IBMから引き継いだThinkPadなどの台数が含まれます。
国内首位になった
ところが、2019年時点では、レノボが40.3%もの圧倒的なシェアを握り、首位になっています。これをよく見てみると、NECと富士通のパソコン部門を傘下に収めたことにより、急激にシェアを伸ばしたことがわかります。

レノボの何が問題なのか
レノボは米国などにおいて、時折問題として取り上げられます。これはどうしてなのでしょうか。

レノボは中国企業である
地政学的な問題
まず、第一の問題として前述の通り、レノボが中国企業であることが挙げられます。もっと言えば、ただの中国企業ならまだしも、中国科学院出身者が設立し、同院の実質的な影響下にあると見られることから、地政学的に西側諸国の警戒を招く要因があると考えられます。
https://www.jst.go.jp/crds/pdf/2008/OR/CRDS-FY2008-OR-10.pdf

疑惑を招く事件がある
Lenovoをめぐる疑惑
レノボが警戒を招く原因として、地政学的な問題に加えて数々の疑惑があります。
「Superfish」騒動
2014年の一部時期に出荷されたレノボ製PCに、アドウェアの一種「Superfish」がプリインストールされていたという問題が、翌年発覚しました。これは偽造したSSLのルート証明書を勝手にインストールし、さらに秘密鍵がすべての製品において共通であるという、極めて悪質なものでした。重大なセキュリティホールであるといえ、「意図的に仕掛けたバックドアではないか」との説まで飛び出したとされます。もっとも、「Superfish」自体がレノボ製というわけではありません。





削除ツールを公開
レノボはこの問題の発覚後、「Superfish」の削除ツールを公開しました。「Superfish」を完全にアンインストールするには、こちらのツールを利用する必要があります。
さらに2015年には、レノボの代表的な製品である「ThinkPad」において、スパイウェアが仕込まれているのではないかという疑惑が報じられました。レノボはこれに対し、データ送信を認めたものの、製品の改善のためであり、個人を特定することはできないなどと説明しました。

中国本土では行っている
一方、中国本土においては、当局の監視活動にレノボが協力しているという見方があります。共産党一党独裁体制にある同国において、そうしたことが行われているであろうことは想像に難くありません。実際に同社関係者もそのような事情を示唆する発言をしたとされます。もっとも、海外向け製品には、こうした機能は搭載していないとされています。




米企業30社へのハッキング疑惑
さらに2018年には、米ブルームバーグ通信によって、米企業30社へのハッキング疑惑が報じられました。これは、中国がごく小さなチップを用いて、約30社の米企業を対象にハッキングを図ったというものでした。真偽のほどは定かではありませんが、これを受けレノボ株価は下落しました。


諜報機関で使用禁止との報道も
2013年にはオーストラリア紙「オーストラリアン・ファイナンシャル・レビュー」によって、米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国、いわゆる「ファイブアイズ」が、情報・諜報機関においてレノボ製PCの使用を禁じたと報じられました。一方、オーストラリア国防省は、これを否定する声明を発表しています。

台湾で使用禁止
中国と政治的に対立する台湾では、2019年、政府機関全部門においてレノボ製PCの使用が禁じられました。

米中貿易摩擦
訴訟に発展
さらなる極めつけは、米中貿易摩擦でしょう。米国では実際に訴訟まで発展しています。

中国製造2025
米中貿易摩擦は、究極的に言ってしまえば米トランプ政権の誕生に端を発すると考えられますが、直接的にはやはり「中国製造2025」が原因と見られます。

技術覇権
米中貿易摩擦は、5GやAIといった次世代技術に関する、米中間の技術覇権をめぐる争いという性質が強いと見られ、特にハイテク分野においてはその激しさを増しています。


OSに波及
中国で現在販売されているWindowsは、中国政府の要請により開発された「Windows 10 China Government Edition(中国政府エディション)」であることが知られています。一方、中国政府は、政府機関で使用するコンピュータを、将来的に中国製CPUとOSの搭載品に切り替える方針であるようです。



レノボPCの種類
NECなどの傘下ブランドを除けば、同社のPCは以下の2種類に大別されます。また、それに加えてスマートフォンのブランドがあります。
Think
「ThinkPad」「ThinkCentre」で知られる、米IBMから引き継いだブランドです。特に「ThinkPad」は赤いトラックポイントが特徴であり、そのデザインは日本で考案されたと言われています。最近になって、レノボの考案による「ThinkBook」シリーズが追加されましたが、こちらについては、IBMとの関係はあまりないと考えられます。

Lenovo
「Lenovo」シリーズは同社の社名を冠したPCブランドで、低価格帯から高価格帯まで幅広く展開しています。他に「Ideapad」や「Ideacentre」、「Yoga」、ゲーミングPCの「Legion」などがあります。ラインナップはラップトップやデスクトップのほか、タブレット、2in1などです。
Motorola
スマートフォン「moto」などで知られる、米国発祥の携帯電話ブランドであり、デザイン性とコスト性能を両立しています。
国産PCはこちら

コメント